電通“鬼十則”の取りやめ検討で顧みる社訓の作り方

経営戦略

電通“鬼十則”

電通“鬼十則”とは

社訓を研究していると、必ず、どのサイトにも見本として取り上げられている電通“鬼十則”に出くわします。

“鬼十則”とは、

1.仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。

2.仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。

3.大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。

4.難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。

5.取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。

6.周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。

7.計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。

8.自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない。

9.頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。

10.摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。

という十カ条の訓戒で、四代目社長が作ったそうです。この中の、

5.取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。

の一行が、長時間労働を助長しかねない企業風土を象徴する心得であるとして問題視され、電通は、社員手帳に、掲載の取りやめを検討しているそうです(2016/11/17現在)

(記事引用元/社員手帳の写真も)
http://www.news24.jp/articles/2016/11/18/07346794.html


電通“裏 鬼十則” 

この“鬼十則”が、電通社員の過労死問題このかた、ブラック企業の証として取り沙汰されるようになりました。

余談ですが、日本人の大勢順応は凄まじく、昨日まで、社訓の見本のように広まっていた“鬼十則”が、瞬く間に、ブラック企業の証になりました。

べつに、電通さんの肩を持つわけではありませんが(その義理もありませんが)

マスコミやマスコミ関係の仕事をブラックと呼ぶならば、テレビ局も新聞社も制作会社も出版社も広告代理店も、みーんなブラックになります。

それでも勤め続けている理由は人さまざまでしょうけれど、共通しているのは、その仕事が好きであること。

編集ならば編集、記者ならば記者、映像ならば映像の仕事が好きなことです。

むろん、勤め人である限り、好きな制作の仕事から、嫌いな営業の仕事へ人事異動することもあります。

それを嫌って、同業の中小企業へ転職する人もいますし、独立する人もいます。

民間にしろ、官公庁にしろ、組織が大きくなればなるほど、その中に居続けるのは、並大抵のことではありません。上手に泳いだほうがいい。

電通“裏・鬼十則”は、それを風刺したのでしょう。“裏・鬼十則”とは、

1.仕事は自ら創るな。みんなでつぶされる。

2.仕事は先手先手と働きかけていくな。疲れるだけだ。

3.大きな仕事と取り組むな。大きな仕事は己に責任ばかりふりかかる。

4.難しい仕事を狙うな。これを成し遂げようとしても誰も助けてくれない。

5.取り組んだらすぐ放せ。馬鹿にされても放せ、火傷をする前に…。

6.周囲を引きずり回すな。引きずっている間に、いつの間にか皆の鼻つまみ者
になる。

7.計画を持つな。長期の計画を持つと、怒りと苛立ちと、そして空しい失望と倦怠が生まれる。

8.自信を持つな。自信を持つから君の仕事は煙たがられ嫌がられ、そしてついには誰からも相手にされなくなる。

9.頭は常に全回転。八方に気を配って、一分の真実も語ってはならぬ。ゴマスリとはそのようなものだ。

10.摩擦を恐れよ。摩擦はトラブルの母、減点の肥料だ。でないと君は築地のドンキホーテになる。

社訓(しゃくん)とは?社内の従業員に守ってもらいたい訓示や訓戒

“鬼十則”も“裏・鬼十則”も、どちらも、言い得て妙なところはありますが、

“鬼十則”は、経営者の視点で、“裏・鬼十則”は、従業員の視点で書かれたような気がします。

いずれにしても、社訓は、従業員の行動を縛ります。

社訓(しゃくん)とは、社内の従業員に守ってもらいたい訓示や訓戒のこと。

社員もアルバイトも関係ありません。

あなたの会社の従業員に、

「これだけは守ってもらいたい」

という創業者や経営者の訓示(訓えや戒め)が社訓です。
社訓には、

すべき・すべからずといった行動規範

や、

かくあるべしといった行動指針

も含まれますが、より具体的な行動規範よりも抽象的で、道徳的です。

家訓と同じですね。

訓の前に「社」がつくか「家」がつくかの違いですから、家訓のほうがピンと
来やすい方々もおられましょう。

たとえば、江戸時代の商家は、今の企業に相当しますので、マーケティングの
神様と呼ばれるコトラー教授をして、

「マーケティングの祖」

といわしめた三井家の家訓(家憲)を借りると、

一、同族の範囲を拡大してはいけない。同族を無制限に拡大すると必ず騒乱が起こる。同族の範囲は本家・連家と限定する。

一、結婚、負債、債務の保証等については必ず同族の協議を経て行わねばならぬ。

一、毎年の収入の一定額を積立金とし、その残りを同族各家に定率に応じて配分する。

一、人は終生働かねばならぬ。理由なくして隠居し、安逸を貪ってはならぬ。

一、商売には見切りが大切であって、一時の損失はあっても他日の大損失を招くよりは、ましである。

一、他人を率いる者は業務に精通しなければならぬ。そのためには同族の子弟は丁稚小僧の仕事から見習わせて、習熟するように教育しなければならぬ。

一、大名貸しをしてはならぬ。その回収は困難で、腐れ縁を結んでだんだん深くなると沈没する破目に陥る。やむを得ぬ場合は小額を貸すべし、回収は期待しない方がよい。

社訓の作り方

三井家の家訓では、7か条のうち、5か条が「ならぬ」という禁止事項になっています。
とはいえ「お客様の前でタバコを吸うな」のような具体性はありませんね?
ここが、行動規範との違いで、そのような具体性は、社訓に限っては、必要ありません。

以上のように、あなたの会社の従業員に、

「これだけは守ってもらいたい」

という創業者や経営者の訓示(訓えや戒め)を社訓といいます。

江戸時代の商家の家訓が、現代の社訓へ変わったと見ていいでしょう。

社訓の作り方はシンプルです(シンプルであっても簡単ではありませんが)

作るのは、創業者か、経営者ですので、社訓には、経営者の思想や哲学が反映されます。

経営者の思想、つまり、経営思想や、経営哲学を箇条書きにして、その中から

「みんな、こうしてくれ。これだけは守ってくれ」

という訓えを抜き出してください。それが社訓になります。

電通“鬼十則”が典型的ですね。良し悪しは別にして、四代目経営者の思想がもろに出ています。

十カ条にこだわらなくても構いませんので、ランダムに書き出してみて下さい。

一か条でも、五か条でも、十か条でも、制限はありません(十か条以下が多いようです)

書き出したら、まとめて下さい。作り上げるまで(人によりですが)、時間はかかります。

むしろ、推敲に時間をかけたからこそ、胸を張って公開できる社訓たり得ます。

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