マーケティングの幸福論 _顧客の幸せのための営利追求

マーケティング

マーケティング幸福論 - 顧客の幸せのための営利追及
食品の偽装に日本が揺れた2008年。

ついに、偽装は、コメにまで及びました。

コメは、日本の牙城とか、国際分業といった、経済論とは次元の異なる、日本人の心象風景とさえいえる特別な食料です。飲料における牛乳に似ています。

銀シャリという俗語まであります。戦中戦後の銀シャリは、盆正月や、病気の時にしか食べられなかった貴重品と聞きます。

こうなると、コメは、単なる食料ではなく、愛惜や敬慕の対象であったともいえます。

江戸時代以前は、石高が大名家の大きさを表していたように、コメを給料にしていた国は日本だけです。コメを尊ぶことにかけては世界で唯一の国でした。

そのコメが、日本人の足で踏みにじられました。三笠フーズの汚染米転売です。

余波はコメのみならず、焼酎、米菓、日本酒など日本特有の加工品にまで及びました。

偽装を(98回もの調査で)見抜けなかった農水省も農水省で、10年で98回ということは、ほぼ月に一度の頻度で調査していたにもかかわらず、見抜けなかった…

ということは、ずさんな調査だったか、いい加減な仕事ぶりだったか、わいろがあったと疑われても
仕方がありません。賄賂で語弊があるならば、癒着と言い換えることもできましょう。

彼らには何が欠けていたのでしょう?

自分の仕事や商売を通じて

「顧客に幸せになってほしい」

という高邁な精神であり、商売の美徳であり、ごく当たり前の倫理感が欠けていたのでしょう。
モラルなどといった平凡な言葉では済まされません。拡大解釈すれば無差別殺傷未遂事件です。

死傷者が出なかったのは不幸中の幸い。

おそらく、我利さえ潤えば、顧客が死んでも知らぬ存ぜぬという、悪鬼が経営していたのでしょう。おそろしすぎます。

10円で仕入れた事実を隠し100円で売る商売は、もともと、だまし・だまされやすい性格を帯びています。だからこそ

「顧客に幸せになってほしい」

との心根が、大樹のごとく社内全体に広く、深く、根を広げている必要があるでしょう。その、正しい心あってのマーケティングです。

いや、正しい心を培うための考え方がマーケティングかも知れません。

自分さえ儲かれば、顧客をだましてもいいと考えている会社が、どれほど多いか、ちょっと検索すればワンサカ出てくるように、毒を混ぜた事実を隠し、そ知らぬ顔して販売し、それで正しい商売と
いえるのでしょうか?

それで儲けても
「カネはカネや。カネに素性はあらへん」
と言い切れるのでしょうか?

商品を持つ人が、もたない人(顧客)の持つお金と交換し、お互いに物質的な満足を得るのが商売です。

大なり小なり、満足すれば、人は幸福感を覚えます。
マーケティング戦略以前に、マーケティングの基本は、取引を通じて、顧客に幸せになってほしいと願う「マーケティング幸福論」です。

たとえ微力であっても、顧客が幸福になるお手伝いをするのが、マーケティングです。
憫笑すべきは、ほとんどの発覚が社内のリークであったこと。

元(辞めた)従業員のリークもありました。

自分さえ儲かればいい経営者は、私服を肥やすのがうまい反面、他人には吝嗇で、従業員にすら薄給で酷使していたと想像できます。

せめて高禄を支給していれば、

「こんなに給料の高い会社に、勤めていて良かった」

との保身が作用し、身内からのリークは無かった可能性もあります。ところが、逆に

「こんな会社、潰れちまえばいいんだ」

と身内に思われたからこそリークされたのでは?

吝嗇な人は嫌われます。

富は分配されるものです。

富を分配するのが経営者の使命です。

マーケティング幸福論は、営利の追及によって経営者が富貴を貪(むさぼ)ることではなく、顧客も、従業員も、取引先も、商品に関わる全ての人々が、取引を通して、大なり小なり、幸せになること。
理想論かもしれません。

コメの偽装が社会問題になった余韻も冷めやらぬ五年後の2013年、今度は、ホテル業界が食品偽装していたように、我利のためには顧客を犠牲にする業界が存在するのも確かです。

しかし、理論論だとしても、理想あっての明るい未来。理想はあったほうが良い。

少なくとも、理想を持たずに、人をだましても儲けようとし、よしんば儲けたとしても、身内からリークされ、全国ネットのメディアで報道され、非難を受け、会社がボロボロになるよりはマシでしょう。

偽装が氷山の一角である以上、食の安全を考えるより先に、マーケティングによって人を幸福にする「マーケティング幸福論」が、日本全国の企業へ、広まるよう願っています。

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