販売が先ではなく、来店が先
不況不況といわれて久しい2008年、コンビニ各社は、それまでの厳しさが嘘のように過去最高益を記録しました。首位のセブンイレブンは、5.9%増の1,780億円。売上高は前期比7.3%増の2兆7,625億円。(2009年2月期決算)
3位ファミリーマートの営業利益は、17.3%増の335億円。売上高は11.0%増の1兆2,457億円。
4位のサークルKサンクスも営業利益8.0%増の231億円と、3社とも過去最高益を記録。
好調の理由は“タスポ効果”。
たばこを自動販売機で買うために必要なカード“タスポ”に申し込まなかったスモーカーたちが、たばこをコンビニで買うようになりました。
日本フランチャイズチェーン協会(JFA)の調べでは、たばこを含む、非食品の売上が、前年同月比で33.0%も増加。商品の構成比では31.5%を占めるそうです。
来店客数は11.8%の増加。
1,000人が118人も増えた計算になります。
わずか一年のうちに来店客数が一割以上も増えたとは、ものすごい伸びです。
つまり、来店者数が増え、購買点数も増えたことにより、売上が増えたというセオリー通り(売上=単価×数量×回数)の結果が出ました。
たばこを買いに、コンビニへ寄ったついでに他の商品も購入する「ついで買い」=インシデンタリ-バイイングの効果が大きかったようです。
たばこを買うついでに、他の商品を買う場合もあるでしょうし、他の商品を買ったついでに、たばこを買い置きしておく場合もあるでしょう。
買い置くということは、計画的ですから、衝動買い(パニック-バイイング)とは異なります。
コンビニのみならず、あらゆる小売店に通じることとして、
「買ってもらう」
より先に
「来てもらう」
のが最優先であることが分かります。
極端にいえば、買ってもらわなくても来てもらえれば何とかなるということですし、反対に、来てもらわなければ、如何ともしがたいということです。
店舗の売上は、買物客が、店内にいて、成り立ちます。逆説すれば、買物客が店内にいなければ、成り立たちません。
つまり、売るも、買うも、来店してもらった上での話であって、売買以前に、来客数が少数ですと、
- どんなに素晴らしい商品を仕入れようと、
- 徹底的に店内を清掃しようと、
- 一生懸命にPOPを作ろうと、
- 朝から晩まで開店していようと、
- 24時間営業にしようと
コンビニ各社の例にあてはめると、たばこの店舗販売が法制化され、来店客数が増加したからこそ、ついで買い(インシデンタリ-バイイング)によって、数量と単価も増加しました。シナジー効果です。
メディアの記事を読むと「ついで買い」で売上が伸びたように書いてありますが、順序を間違えてはなりません。
タスポは、自動販売機で買っていたスモーカーが、コンビニへ立ち寄る機会を、半ば強制的に、創出しました。
購買が先ではなく、来店が先です。来店なくして、購買は起こり得ません。
重要事項につき、繰り返しましょう、耳にタコができるまで(笑)
来客という人がいてこその売上
です。売上を上げたいのが小売店のオーナーですから、売上金額という結果の数字のみ気にしがちですが、売上を頂く前にお金を払ってくれる人に来てもらう必要があります。
人とは?
いわずもがな、お客さんのこと。
この基本中の基本を忘れて
「どんなPOPにすれば売れますか?」
と訪ね回っても無意味です。
戦略あっての戦術である以上、POPという枝葉よりも、売上金額よりも、来店という根幹が重要であることを先ず理解する必要があります。つまり、
売るより先に、来店してもらうには、どうしたらいいか?知恵を絞る
必要があります。小売店のマーケティングにおける最重要ポイントは、買ってもらうことではなく、来店してもらうこと。
極論するならば、来てもらえば、何とかなります。
来店客数が増加すれば、購買点数も増え、売上=単価×数量×回数というセオリーが成立します。売れます。
小売店マーケティングの場合、売れたという結果は、来てもらったという絶対条件に付随します。
ネット通販も同様に、ホームページという店舗へ訪問者が来なければ、どんなにカッコいいホームページを作ろうとも、ムダなのと一緒。
本質はリアルもバーチャルも変わりません。商品を買うのは、カラスではなく、人間です。
売上が足りなければ、売上を増やすのではなく、来店客を増やしてください。
売上=単価×数量×回数のセオリーは、正しくは