4 .商取引とは
できの悪い営業マンに限って、自社の製品だけを売り込み、自分の売上だけを追い求めます。中編の例でいえば、
「印刷屋でございます。パンフレット作りませんか?チラシはいかがですか?お安くしますよ?」
とオファーして、
「付き合いのある刷会社があるので、お断りします」
と突っぱねられ、断られるから
「そうおっしゃらずに」
と無用に下手に出ることになります。「まずは話を聞いてください。会って下さい(アポ下さい)」
と。
そうなれば、目的が、商談という取引ではなく、アポにすり替わってしまいます。
しかも「売りたい」という自分のメリットだけが先行するため、たとえ会っても相手のメリットを強調できず終いで、結局は売れずに終わることになります。
もちろん、自分の得(自社の売上や利益)になることをオファーしたい気持ちは、わかります。
なぜなら、人は自分に最も興味があるからです。自分の商品を売りたいのが本音でしょう。
しかし、売り込まれる側としても、自分に最も興味があります。
買う商品に興味があるのではなく、自分にとって、どうメリットがあるか?に興味があります。
優秀な営業マンは、商品より先に、そのメリットを提示し、期待を高めます。
もちろん、自分の売っている商品を熟知しているからできますし、商品が顧客の何にどう役立つか知っています。
だから、取引を持ちかけられます。
商取引とは、商品と代金の取引ではなく、顧客のメリットと代金を交換することなのです。
5.取引意識
できる営業マン当人や、売れる営業マンご本人にとっては、ごく当り前な話だと思いますが、彼らは一様に、1 腰が軽く(席を暖めている暇なく移動し)
2 マメで(接触頻度が高く)
3 三方一両得の取引を持ちかける(三方よしの取引意識)
があります。
1と2については巷間よく言われることですが、3の「三方よしの取引意識」については、近江商人の商取引として有名です。
取引の二文字が意識の根底にあるからこそ優秀な営業マン足り得るのです。
今でも優秀な営業マンと接するたびに感じるのが、優秀な営業マンに限って、
「こうすれば、おたくもイイし、うちもイイ。お互い万々歳や」
と取引を持ちかけること。
取引の意識があるから
「買ってもらおう」
などと卑屈に依存することなく、滅私奉公になりそうな話は堂々と断ることができるのです。
誰かに不利な話は
「取引にあらず」
と思っているのでしょう。
抽象的にいうと、
「みんなが幸せになる」
には
「どうしたらいいか?」を常に考え、そうした話にアンテナを張っているから彼らは一様に明るいように思います。
よくよく考えてみれば当り前な話で、取引である以上、自分と他人が介在するのだから、
「自分を大切にしたかったら、他人を大切にする」
のが当然であるように、
「自分の売上を伸ばしたかったら、他人の売上を伸ばす」
のが自然の摂理。
それを、優秀な営業マンたちは、営々黙々と続けているだけで
「何も特別なことは一切していない」
と芯から思っているのでしょう。
それがトップセールスの証かも知れませんね。