必要なとき依頼して頂く長期接触営業戦略
弁護士全体の価値と、弁護士個人の価値は別
弁護士にしても、医師にしても、ほとんどの士師業は、お客様からの相談を待つ、待ち受け営業です。
小売店と同じですね?牛乳の価値を知っているお客様はスーパーへ行きますし、電動ドリルの価値を知っているお客様は、ホームセンターへ行きます。
このように、待ち受け営業は、価値が知られている商品の販売に適しています。
反面、価値が知られていない商品は、待ち受け営業に向きません。何らかの行動を起こし、理解せしめる必要があります。
では、弁護士の何が価値になるのでしょう?
- 刑訴で弁護してもらえる?
- 民訴で代理してもらえる?
それらが出来る弁護士は35,000人います。特定の弁護士A先生である必要ありません。
役務をこなすだけでしたら、弁護士であれば誰でもいい、つまり、国選でいいことになりませんか?
弁護士事務所を開設するのと、弁護士業を続けていくのは、別スキル
弁護士の役務である弁護や代理が、弁護士の価値だと、多くの人が、思っています。
ところが、それは、弁護士全員の価値であって、特定の弁護士の価値ではないとしたら?
では、特定の弁護士A先生の、何が価値になるのでしょう?
ご自分の業界ですと、主観的に(自分は正しいと)考えがちですから、異業種を参考にしてみましょう。
たとえば、コンビニ業界全体の価値は、
- 24時間あいている
- 公共料金を支払える
- ATMがある
- 宅配便を出せる等々
ですが、個店の価値は「近い」ではありませんか?
近くないコンビニは、八割の利用者にとって、価値がありません。ならば、その80%は捨てるのが戦略です。
このように、業界全体の価値と、業界に属する個々の価値は異なります。
それを分けて考え、業界全体の価値を、ご自分の価値のように、役務=価値であると、勘違いしなければ大丈夫。
弁護士の価値とは?他の弁護士とは違う何かを差別化
話を元に戻して、弁護士の価値とは?
人それぞれ、解釈は異なりましょうが、
- 人柄
- 理念
- 実力
ではありませんか?それが伝わらなければ、他の弁護士でもいいことになります。
では、他の弁護士と違う価値は何かというと、たとえば、傾聴、つまり、人様(お客様)の話を聞くことが挙げられます。
聴く。
さらりと二文字で書きましたが、じつは、これ、営業活動の極意。
商品を説明するだけの営業マンなら、パンフットで構いませんよね?入りたての新人でも出来ます。
お客様から情報を聞き出し、ニーズやウォンツに合った商品を売るのが営業マンの仕事です。
人は、親身になって聞いてくれる = 自分のことを認めてくれるとみなします。
プラスのストロークです。
だから、聴きましょう。
しゃべるのは法廷で、検事や判事に対し、依頼人を代理し、しゃべりまくってください。
依頼人に対しては、しゃべるのではなく、聴きましょう。
クライアントは、弁護士の話を聴きたいのではなく、自分の悩みを解決したいのではありませんか?
なので、悩み(話)を聞いてくれない弁護士に、役務を遂行する国家資格はあっても、お客様にとっての価値は、ない(国選で充分という)ことになります。
依頼人の話を遮るのは、情報は要らないという非言語コミュニケーション
その悩みを解決できる弁護士である理念を伝えましょう。
たとえば、
「わたくし達○○弁護士事務所は、○○を信じ、○○に基づいて動き、○○を排し、○○を全力で助ける弁護士事務所です」
と第二名刺に書きましょう。その具体例として、
「自分がしゃべるよりも、先に、依頼人の話を、じっくりと聞きます。それが本当かどうか、試しに相談してみて下さい」
これが、弁護士の価値だと筆者は考えます(司法書士や行政書士も)
なぜなら、依頼人は、自分と価値観の合う弁護士に依頼したいからです。
価値観の違いで、何から何までダメ出しされたのでは、何のために相談しているのか、分からなくなりますので。
弁護士の理念を伝えて差別化する
たとえば、離婚訴訟。夫婦の本音は
「別れたくない。よりを戻せるものなら戻したい」
と思っていたとしても、離婚させたほうがカネになるからといって、ロクに話も聴かず、離婚を勧める弁護士へ、依頼したいと思うでしょうか?
人の和や、夫婦円満を願う弁護士事務所ならば、その理念を文字にすればいいのです。
「当弁護士事務所では、夫婦が円満に暮らして欲しいと願っていますが、それが叶わないケースもあります。
しかし、争ったまま離婚するのは不幸ですから、二人が別れるのは、最終手段で、それよりも先に、なんとか争いを収めるべく、原因と方策を考えるため、徹底的に、お話を聞かせて頂きます」
と、ホームページや名刺など、あらゆる媒体で宣言しましょう。
- 理念は、選ばれる理由になります。
- 理念は、人柄を伝えます。
- 理念は、価値になります。
- 理念は、営利追求としてのマーケティングを、社会へ貢献するマーケティングへ昇華します。
だ・か・ら、無形財で商売するなら尚のこと、理念は欠かせません。
なのに何故、理念のない(あっても難解な = 伝わりにくい)弁護士事務所が多いのでしょう?
一つは、理念が、価値になることを、誰も教えてくれなかったから。
たとえば、ホームページを作るのは結構ですが、自らの価値を掲載していないホームページやブログを作っても、時間とゼニの無駄です(キッパリ)
価値を教えてくれないホームページ制作会社は、ホームページという箱を作るのが得意であって、中身を作ってくれる戦略家ではありません。
そういうサイト制作会社へ依頼しているのであれば、戦略を教えてくれるはずありませんので、
- ご自分で考えるか、
- 他の誰かに教えてもらう
他ありません。
弁護士事務所のホームページには(広告や販促物にも)、価値を載せましょう。その価値を創るのがマーケティング戦略です。
決して、Webサイトを作ることが、弁護士のマーケティングではありませんよ?
これは、牛乳や、電動ドリルとは違って、価値が理解されにくい商売すべてに通じます。
いつ起こるか誰にも分からない法律問題が起きたとき思い出してもらうこと
商品の価値が知れ渡っている商売は、店舗や事務所を構えて、待ち受ける営業に向いていると前述しました。
小売店と同じで、風邪薬の価値を知っているお客さんは、薬局へ行きます。
しかし、価値が見えない無形の商品となると、どんなメリットがあるか?わからないため、わざわざ、
- 電車賃やガソリン代の移動費を払ってまで
- 移動する労力を使ってまで
- 移動の時間をかけてまで
目に見える商品も、設備もない法律事務所へ行かない、行きたくない
のが本音では?お客様からすると、メリットが分からなければ相談に来ませんから、開店休業やむなし。
法テラスのように、無料の法律相談であっても、依頼人は、法的な問題が起こるまで、法テラスへ行きませんよね?(行く必要がありません)
では、いつ、法的な問題が起こるかというと、神のみぞ知る。
明日かも知れませんし、一年後かも知れません。
法テラスは、国の法人ですから、相談者が来なくても、つぶれませんが、個人の法律事務所は、お客様が来なければ、つぶれます。
代金と引き換える以上は弁護士業も普通の商売
では、どうすれば良いか?というと、いつ起こるか誰にも分からない法律問題が起きたときに、思い出してもらうことです。
どうやって?
大手の事務所はTVCMを流しています。電車やバスに広告を出している事務所もあります。
マーケティング(のプロモーション)の中で広告費が最も高額
参考までに、ザッと広告費を一覧にしますと(目安です)
- TVCM(キー局一回15秒)75万円※制作費を含めて総額一千万円以上
- TVCM(地方局一回15秒)20~50万円※制作費を含めて総額500万円以上
- 新聞(朝日読売全国版)全五段 1,500万円(もちろん一日一回限りです)
- 新聞(地方紙)全五段 100~200万円
- ラジオ(東京一回20秒)70万円
- ラジオ(大阪一回20秒)40万円
- ラジオ(地方一回20秒)10~20万円
- 雑誌(4カラー1ページ)150万円前後(専門誌は50~100万円前後)
- 電車の窓上(JR山手線4日間)80万円
- バス(都バス窓上一週間)50万円
- バス(地方バス窓上一週間)2~9万円
- 電柱広告(都心1ヶ月一本)2~3,000円※別途プレート1枚@1万円
- 電柱広告(地方1ヶ月一本)1~2,000円※別途プレート1枚@1万円
- 新聞チラシ一万枚 15万円(配布料@5+印刷費@10※枚数に因る)
(上記は、あくまで目安です。広告費は、セット料金等々、細かく設定されています。
また、すべて制作費別です。枚数やデザイン会社によって異なります。
制作費は、タレントを含めると、知名度にもよりますが100万円以上。
写真撮影を含めると、カメラマンにもよりますが、1カット10万円以上かかります)
こうして比較してみると、新聞チラシが最もリーズナブルなように見えますが、千枚でしたら、反応が1件あれば成功でしょう。反応ゼロでも、おかしくありません。
大手の事務所や、非弁提携弁護士事務所は、こうしたハイリスクと引き換えに新受を獲得しています。
あなたも同じ戦略で戦いますか?それとも別な作戦で戦いますか?という資金力の判断です。
依頼人が増える作戦(戦略と戦術)を立てよう
広告費が高いから、ホームページにするという発想になるのでしょうが、Webサイトにしても、PPC広告に、毎月、数万円以上を費やしていますし、SEOにも余念がありません。
大手の事務所は、それだけの費用を支払っています。
それらのサイトと戦って、勝ち上がらなければ、上位表示されません(誰にも見てもらえません)
現実は、ほとんどの個人事務所が、毎月数十万円どころか、数万円の広告費を払うのも大変でしょう。
ならば、せっせと名刺を集め、毎月、ハガキを出すことです。長期接触営業戦略です。
広告で集客するか?販促で集客するか?
ハガキならば、1,000枚送っても、官製ハガキ代5万円ちょっとで済みます。
一人の営業マンを雇用するより、ナンボ安上がりでしょう。
1,000人の顧客母数があれば、1~2名の弁護士事務所なら、何とかやっていけるでしょう。
もっと儲けたかったら、もっと顧客母数を増やすことです。
ハガキの印刷費は、片面モノクロ一色なら2~3千円、4Cカラーでも1~2万円で済みます。(ハガキ 印刷 で検索してみて下さい)
問題は、ハガキに何を書くか?です。
これは、TVCMにしても、チラシにしても、ホームページにしても同じ。
Webサイトを作るだけなら、筆者(シロウト)にも出来ます。
要諦は、ハガキというツール(武器)を使って目的を果たす作戦(戦術)です。
それが、ハガキに何を書くか?ということ。
たとえば、季節柄、これから準備するハガキの一つに、暑中見舞いがあります。
暑中見舞いを、戦術と見なさなければ、よくありがちな、
『暑中お見舞い申し上げます。当事務所は、8月13日~17日まで夏季休業します』
という暑中見舞いを送るでしょう。それはそれで構いません、慣習ですから。
ところが、「これは、こういうものなんだ」という既成概念を取り払う長期接触営業戦略におけるハガキ戦術ですと、受け取った人が、
『あの先生らしい暑中見舞いだなあ』
と顔が浮かぶ暑中見舞いを送ります。これがリマインダーになり、
『何かあったら、あの先生に頼もう』
と思い出してもらえます。また、ハガキは、開封率100%で、他に人に回し読みしてもらうことも可能。
弁護士の使い方を教えてあげよう
戦略下における戦術は、ハガキ戦術だけではありませんし、ハガキ戦術も、暑中見舞い一つではありません。いくつものオペレーションがあります。
では、暑中見舞い以外に、どんなハガキ戦術があるのでしょう?
一つは、弁護士の使い方を教えて差し上げることです。
ハガキ一枚に、原稿用紙一枚(400文字)入りますから、ショートストーリーならば、充分な容量。
たとえば、離婚問題を専門にしている弁護士ならば、裁判の前後も使える例を載せ、紹介も促します。
弁護士プロモーションのハガキ戦術の例
例)ヘッドライン『 結婚で失敗したくなかったら?弁護士を使おう! 』
サブタイトル『 友達に 思わず 教えてあげたくなる 弁護士の使い方 』
(ボディコピー)
- 先日お亡くなりになった有名人Tさんと、妻Sさんの遺産相続問題、あちこちで報じられていましたね?
- 婚姻届けを出したところで、お互いの財産が別であることを取り決めておけば、あのような泥沼になりませんでした。
- 結婚前に、婚前契約書を交わしておけば、相続でモメることはありません。
- 婚前に限ったことではありません、今からでも遅くありません。
- 著名人のような死別で、はたまた、離婚で、夫婦や家族が、愛憎劇を繰り広げることの無いよう、契約書を作っておくと良いですよ。
- この弁護士の使い方を、こっそり、お知り合いにも、教えてあげてください。
- 当事務所なら、法的に効力のある契約書を作成できます。
- ご興味がありましたら、お電話ください
- お電話だけなら、無料です。ホームページはこちら。
これが弁護士のプロモーションであり、長期接触営業戦略におけるハガキ戦術です。
ボディコピーが290文字ですから、ヘッドラインやサブタイトルと組み合わせてレイアウトしても、ハガキ一枚に余裕で入りきります。
これで、一回(ひと月)分の接触が可能になります。
ハガキやホームページ等の作ることが重要なのではなく、作戦を立てることが重要
もちろん、弁護士本人が、いちいち営業しに出向く必要ありません。
参加者が集まるかどうか心もとないセミナーを開く必要もありません。
電車賃もガソリン代も要りません。
やるべきことは、ハガキの原稿を作って、原稿データを、通販印刷へ送るだけ。
ハガキが納品されたら、宛先を印刷して、ポストに入れるだけ。
2,000通以上なら、郵便局へ持っていって、割引を申請するだけ(2,000通なら一万円ちょっと安くなります)
ハガキやホームページ等の武器を作ることが重要なのではなく、こうした作戦(戦略を具現化するための戦術。戦略戦術)を立てることが重要です。
弁護士の使い方は価値になる
弁護士にしても、司法書士にしても、行政書士にしても、
『使い方を教える』
というと、なぜかしら「相続とは云々」「離婚とは云々」と法律を教えたがる傾向にありますが(先生だから?)、お客さんは、法律が知りたいんじゃなく、
自分にとってのメリット(価値)が知りたい
わけですから、
どんなメリットがあるか、いくつかネタを挙げて、年に何度かハガキを出して、
「こういう使い方がありますよ~」
と提案してあげましょう。
使い方や用途は、価値になります。これがマーケティング(の中のプロモーション)の王道である“用途提案”です。
士業の使い方や用途の提案例
先の例のプレナップ(婚前契約)にしても5回くらいシリーズ化できますから、一年に一回づつ取り上げるとすると、5年分もの接触ネタになります。
- 第2回『相談せずに買い物できる上限額を決めておこう』ある旦那さんが、勝手に(相談なくして)車を買って来ちゃった例
- 第3回『家計費の金額を決めておこう』ある旦那さんが、家計費で馬券を買っていた例
- 第4回『浮気しない!当り前のことにサインできるかどうか契約書で試そう』口約束は「言った言わない」になり、揉め事の火種になる例
- 第5回『日本の離婚率は35%!3組に1組、2分に1組の夫婦が離婚している』離婚しないために、婚姻契約書を作っておきましょう。婚姻届とは違います。
このようなプレナップ(婚前契約)は、受任額が低くて、弁護士は、あんまりやりたがりませんから、同じく、法的な契約書を作ることができる司法書士や、行政書士に向いているでしょう。死別のあとの遺産相続も絡んできますので、司法書士にピッタリでしょうね。
このように、ハガキ一枚あれば、点と点を、線で結ぶ(お客さんのメリットと士業の商品を、数十円で結ぶ)ことが可能になります。
もちろん、ハガキだけが戦術ではありません。無料相談会もあれば、紹介(中間客)もあります。
ハガキを取り上げたのは、コストパフォーマンスが高いからです。
マーケティング(の中のプロモーション)は、値引き行為に他なりませんので、TVCMにしせよ、雑誌広告にせよ、コストパフォーマンスが高い作戦を立てましょう。
それが、マーケティングの戦略戦術です。