あなたが郵政大臣だったら?個人から企業へ広がり始めた年賀状終い

おもしろマーケティング

時勢に呑み込まれつつあるプライベートな年賀状終い

年賀状を廃止する企業が増えているそうですね。すでに個人は平成の終わりを期に、

「来年から、年賀状、出しません」

と宣言する年賀状終いが、40代以降に広まったそうです。

年賀状終い(じまい)や、終活(しゅうかつ)年賀状というそうです。

めでたき年賀状を、人生の店じまい(終活)に用いるのは、何やら、本末転倒のような気もしますが、

とりたてて2018年に始まった現象ではなく、2017年より以前は、高齢を理由に辞退する方々が多かったとか。

文例は、

「あけまして おめでとうございます。さて 下名も高齢になり 筆をとるのが難しくなって参りましたので 本年をもちまして年賀状を失礼したく存じます。勝手ではございますが 今後とも 変わらぬご厚誼のほど お願い申し上げます」

のような意味合いで、こうした年賀状を受け取った経験がある方々は、なんと、過半数を超えるとのコト。

それに加えて2019年(2018年の発送分)は、

「平成最後の年賀状をもちまして」

という理由(?それとも枕詞?)で、欠礼を通知しているんだとか。

年賀状が減り続けています、あなたが郵政大臣だったらどう対処しますか?

確かに、これまで、年賀状を研究し尽くした結果、プライベートな年賀状には疑問を感じていましたし(ビジネス用は必須です)

わざわざ通知しなくても、送らなければ、来年からは、届かなくなりますので、

(今年、届いた年賀状を、来年の送付リストにする方々が多いと思いますので)

「こりゃ~♪いい。自分も、平成の終わりをもって“年賀状終い”しよう」

と、2018年から、どなたにも差し出していませんが (宜しくご理解下さい)

「この調子じゃ、プライベートの年賀状は、10年も経たずに、崩壊するだろう」

と、時勢の速さに慄いています。

小学生だった子供の頃は、送るも、もらうも、楽しみだったんですケドねえ、年賀状。

もちろん、ゼロにならないまでも、年賀状の需要は、個人が7割を占めていますので、個人の年賀状離れが、年賀状という習慣に、きびしく影響するのは、火を見るよりも明らか。

さあ、郵政大臣さん、どうしますか?まだテレビCM頼みですか?

さて、あなたが総務省の大臣だったら、どういう策を講じますか?

年賀状が減る原因を分析[1]年賀状は送り主が一方的に負荷を負うことがバレた

では、マーケティングの定石通り、情報を収集して分析しましょう

そもそも、年賀状があるのは、日中韓の三国のみで、中韓は、日本とは異なる(親しい方々へ送らない)そうですから、親しい方へこそ送る日本の年賀状は、独自の習慣といって過言ではありません(元号に似ていますね)

これを、詭弁の代表的な手法といえる「先進諸国に比べて日本は云々」に当てはめますと、先進各国に年賀状はありませんので、日本も、無くて構わない理屈になります。

必要性がないにもかかわらず、あるような思い込み(バイアス)にかかっていたといっていいでしょう。

年賀状に慣れ親しんできた日本の内側から見ると、年賀状は、存在して当然という認知バイアス(偏りや先入観)があるタメ、見えづらいかも知れませんが、国際的な通念で考えると、年賀状より、

Season's Greetings!のようなグリーティングカードが一般的

で、他国と比べるならば、こちらが世界標準です。

しかし、それが正論とはいえ、100年以上も前から普及している年賀状が全滅するはずはなく、プライベートの年賀状は、次のようなニーズがある限り、残っていくでしょう。

  1. たとえ虚礼であっても(中元歳暮のように…と比喩していいかどうか別にして)年賀状がなけば人間関係の維持が難しい相手へ送るために残る。
  2. 年賀状という紙で挨拶しなければヘソを曲げる相手(結構いますよね:笑)へ送るために残る。
  3. 来しかた行く末を知らせる本来の目的で残る。これが、健全で理想的な年賀状姿です。

しかし、3以外は、虚ろな人間関係をつなぎとめるためのツールといってよく、それは、プライベート向けではなく、ビジネス向けのオフィシャルな年賀状の役割でしょう。

もちろん、ビジネスユースであっても、真心こめて年賀状を書く篤実な方々はいらっしゃるでしょうけれど、

  • ビジネスは、経済的な価値(商取引)を目的とした人間関係であり、
  • プライベートは、精神的な価値(心の満足)を目的とした人間関係が基本

です。よく「友人とは金品を貸し借りしないほうがいい」(経済的な価値と精神的な価値は、原則、分離したほうがいい)と言われる通りです。

このように考えると、プライベートな年賀状は、本来の目的である「3」を除けば、負荷(後述)であることがバレた時代に差しかかっているといっていいでしょう。

もちろん、GtoG(公務員から公務員へ)と、BtoG(企業からお役人へ)は残るでしょう。

年賀状が減る原因を分析[2]誰でも情報を発信できる時代の到来

いわずもがな、年賀状は、写真と、文字の、二次元情報ですよね?

情報を送ることができるのは、年賀ハガキだけに留まりません。

電話でも、スマホでも、パソコンでも、FAXでも、グリーディングカードでも、年賀タオルでも、謹賀新年の情報を届けることができます。

ハードウェアのみならず、筆者におけると当ブログのように、情報を発信する人にとって、年賀状がなくても、謹賀新年の文字情報を発信できます。

ブログでなくても、Eメールでも、メルマガでも構いませんが、

  • Eメールは、文字が画一的で、味気ないし、
  • メルマガは、パーソナライズ(個人特定)されていないし、
  • ブログやホームページは、不特定多数向けだし、

パソコンが、ビジネスユースから発祥しただけに、キーボードのアスキー配列自体が、万人向けではありませんから、インターネットが二十数年前から存在すれども、今ひとつ拡散しませんでしたが、

スマホの登場により状況は一変

しました。メルマガやブログ記事のように、まとまった文章が書けなくても、わずか一行で書き込める(コミュニケーションできる)インスタやツイッターが普及したことで、誰でも、気軽に、情報を発信できるようになったため、親しい間柄へ、年賀状を送る必要性が希薄になりました。

スマホが、年賀状の代わりになったといっていいでしょう。しかも、年賀状一枚あたり数十円を買う必要なし。

年賀状が減る原因を分析[3]送る側のみ負荷を背負う年賀状

極めつけは(郵政の関係各位が気づいているかどうか)年賀状は、送る側のみ負荷を背負う仕組みの上に成り立つ商売(年賀はがきの製造販売)であること。負荷とは、

  1. お金(切手代)
  2. 時間(考える時間。書く時間)
  3. 手間(購入と投函)

の三つ。この三つを、受け取る側ではなく、送る側が、すべて負担しなければなりませんので、

「こっちは送ったのに、あっちは送って寄こさなかった」

と憤る方がいるワケです。そのことに気づいていなくても(暗黙知であっても)

「こっちは、三つの負荷を背負ったのに」

と、不公平に感じてしまう人間心理は、致し方ありますまい。

これじゃあ、送りたくなくなっちゃう心理も頷けます。

ところが、スマホには、三つの負荷が(事実上)ありません。

  1. お金(送信費)=ほぼタダ
  2. 時間(考える時間。書く時間)=短い口語体で、片手で打ち込むのみ
  3. 手間(購入と投函)=買いに行かなくても、出しに行かなくて良し

これですもの、年賀状がスマホに勝てるワキャありませんよね?

余談ですが、市場規模は?というと、ピーク時(膨らみきった市場)が44億枚で、2019年は、半減の24億枚だそうですから、

  • 50円(2003年)×44億枚 = 2,200億円
  • 60円(2018年)×24億枚 = 1,440億円

で、人口が減少していく今後、ナンボがんばっても、2,200億円の売上を超えるのは困難で、TVCMを流そうと、郵便局員が自爆営業しようと、減ることはあっても、増えることはありません。

唯一、年賀はがきの郵代を一枚@100以上に値上げすれば、ピーク時の市場規模に近づけることはできますが、100円になったら、年賀状離れが、ますます、加速するのは、推して知るべし。愚挙きわまりないことは、誰の目にも明々白々。

それでも、100円になろうと、1000円になろうと、段階的に、やっていくんでしょうけれども、ね(苦笑)

ますます売れなくなる年賀状を売るためのマーケティング プラン

競合がスマホとなると、プロモーション(テレビCMや自爆営業)のみで市場を維持するのは困難(というより不可能)です。

そこで先ず、郵政(昔は役所)の独占市場ゆえに気づかなかった商売の本質が、

  • 紙(年賀はがき。年賀切手)および配達ではなく、
  • コミュニケーション(無形)

であることに気づいていい頃。

先の分析の結果、年賀状は、形式的なコミュニケーションに向いていることがわかりましたので、ターゲットは、スマホのほうが優位な前記【1】~【3】のプライベートユースを捨てて、【1】~【3】が障壁になりにくい(広報の業務になる)ビジネスユースに特化する方がよいでしょう。

市場の7割を占めるプライベートを捨てれば、プロモーション費が浮き、随分と利益が残るハズ。

(ぶっちゃけ、約1,000億円も売上が急落しているっちゅーに、相も変わらず全国ネットでテレビCMを流す余裕があるんですか?って話です)

もちろん、無形(コミュニケーション)が商品ですから、ハード(年賀はがき)を企業へ向けて売り込むのみならず、コンテンツも一緒に販売します。

コンテンツというと、文例を思い浮かべ易いかも知れませんが、さにあらず。

たとえば、筆者は過去、

マイクロSDカードを年賀状に貼り付けて送った

ことがあります(郵便法規に違反しないことを郵便局に確認しました)

これ(マイクロSDカード)により、ハガキ一枚といえども、

莫大な容量の写真・動画のデータを送付

できました。それによって広がりが期待できるのは、写真や動画の撮影と編集も受注できること。

延いては、それらを活用したインセンティブイベント等も受注できる可能性が高まります。シナジー効果です。

さらに、次のようなプランも、提案します。

一等が、現金30万円なんてケチくさいコト言ってないで、2億円にしましょう。

差出人と、受取人が、一億円ずつ、折半できる仕組みにするんです。

送るほうも、受け取るほうも、楽しみ。そんな商品にしましょう。

え?できない?

できないと拒否する前に、できる可能性を探しませんか?

それが、可能性を追い求める、マーケティングの仕事ですよね?郵政大臣。

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