お客さんは「買いたい」
と思う前に、
「選びたい」
と思っています。買いたいと欲する(desire)よりも先に、興味(interest)が先に位置するAIDA原理の通り、
選んで買うから納得できるし、納得したものを買うから満足
します。顧客満足の発生です。満足すれば、良い記憶が残りますから、
また買おう
と思います。そうしてリピートが発生します。買うには対価が求められます。支払いです。
支払いは、お金を失うマイナス行為です。誰だって、財産を失いたくありません。
しかし、選ぶだけなら財産が失われることはありません。安心です。
ウィンドウショッピングや、カタログ通販は、選ぶ楽しみにもなります。
下調べにもなります。
選んでいる段階で擬似購入している
ため、すんなりと購入へ進み、購入後の不協和も少なく済みます。分りやすくいえば、選んでいて徐々に、
「これ、買ったら、イーだろうなあ…」
と興味が高まり、そして、
「買いたいなあ…」
と欲しくなり、そして
「よし!買おう」
と決断します。AIDA法則のIとDとAです。
選んで買ったものだから、満足
しますから、買った後になって、「ああ、失敗したなあ」
とは後悔しにくい…というわけです。
だったら、買いたい商品を選べるようにしておいて、
「さあ、どうぞお選び下さい」
と案内し、あとは堂々としていれば良いのです。
コメつきバッタろしく、下げでもの頭をペコペコ下げる必要ありません。
「頭を下げるな」
と申し上げているのではなく、買ってもらって、
「ありがたい」
「ありがとうございます」
と感謝すれば、自然と頭が下がるものではありませんか?
接客の基本は、謝念
頭を下げる練習よりも、感謝できる人間であり続けるように、品性を磨くほうが肝要です。コメつきバッタになるのと、感謝できる人間であろうと務めるのは、まったく別次元の話ですよね。
これは、衣料もハンバーガーも高級車も同じ。選択候補は、同業他社の商品とは限りません。
フェラーリが欲しい人は、クルマが欲しいのではなく、カッコいいスーパーカーが欲しいのかもしれません。
カッコよさに価値を認める人は、フェラーリでなくても、ランボルギーニでもいいのかも知れません。
ランボルギーニが欲しい人は、速さが欲しいのかもしれません。
速く移動できるのであれば、自家用ジェットやヘリコプターでもいいのかも知れません。
自家用ジェットを欲しい人は、飛行機が欲しいのではなく、ステイタスが欲しいのかもしれません。
ステイタスに価値を求める人は、自家用ジェットでなくても、家や別荘のうほうがいいのかもしれません。
このように、選択は、商品(製品やサービス)ではなく、
価値
を中心に行われます。価値とは、その人にとって大切なもの
です。お客さんは、それ(自分にとって大切なもの)を選ぼうとしています。関与度の高低は別として。モノが無かった高度射経済成長期から、モノが行き渡った経済安定期を経て、お客さんは、
『消費者は、成熟社会を迎え、選択者になった』
と、拙著で提唱した通り。経営戦略“左袒布略”の選択論です。
シャッター通りと称されるようになった商店街を挙げるまでもなく
「選択なきところに成長なし」
で、選べるところから人は買います。選ばれるようにしましょう。ライバルではなく、あなたを。
【追記】
「選ばせなくたって、単品で、繁盛している飲食店が、あるやろ」
という反論もあるでしょう。それは、
メニューの異なる店舗同士を選んでいる
からです。
お客さんにとっては、いち店舗の中から一つを選ぶのも、複数の店舗の中から一つの店舗を選ぶのも、同じ、選択行動です。
人は、365日24時間、同じメニューばかり食べているのではなく、それを食べようと思った時、頭に浮かんだ候補店へ足を運びます。
この商品群に入った飲食店が、メニューに関わらず、繁盛します。これを想起商品群といいます。
「単品で繁盛している通販があるやろ」
それは、あれもこれもゴチャゴチャ並べるよりなら、ジャパネット○○○のように、今日はこれ!と単品で訴求するほうが、ピンポイントで伝わりやすいのと、あるいは、スーパーの広告品のように、その単品が囮になっているからです。