1/4.営業戦略が混在すると?独立されて止む無し
営業戦略の型が混在すると、振り回されるはずのない経営戦略が、振り回されてしまうことがあります。
まず、どこの企業にでもありそうな人事戦略(ヒト)の問題。
地縁、血縁、縁故といった何らかの事情でもない限り、(商材を仕入れやすい業界の)優秀な営業マンは、待遇が良くなければ、独立するか、引き抜かれて、去って行きます。
営業職に限った話ではありません。本質は、芸能事務所に似ています。売れるタレントは、独立するか、待遇が良い事務所へ移籍するため、事務所は高待遇で引き止めますよね?
独立しない営業マンが優秀ではないという意味ではなく、経営者になるのと、社員のままでいるのは、別次元の話。ある優秀な営業マンは、
「カネ(資金)で苦労したくないから、独立しない」
と明言していましたし、別の“超”優秀な営業マンは、
「給料も待遇も悪いけど、他に、行くトコないんだよね」
とゲラゲラ笑っていました。地方の市町村では、他に、勤め先がないから、生活のために、仕方なく居るのだそうです。
「独立できる商材じゃないし」と。
はたまた、一旦、独立し、
「自分は、経営者に向いていないことがわかった」
と、戻って来る営業マンは強し。
経営者意識を身につけて帰って来ますから、雇用されている立場でありながら、経営者と同じ思考回路をもっています。
要するに、優秀な営業マンを、安月給で雇用し続けるのは、(何らかの事情でもない限り)不可能に近いといっていいでしょう。
そういえば、近ごろ、待遇、見直していますか?
2/4.戦略という意識なくして無意識に作る営業戦略
ずいぶん昔の広告代理店業界のように、独立する営業マンに、ついていく顧客も現れます。
お客さんがいなくなるのですから、売上も減ります。
離れていく顧客が、優良顧客だった日にゃ、目も当てられません。
そうなると、営業戦略や、経営戦略どころの話じゃありません、焦眉の急の死活問題です。
そういえば、ある中小企業の社長が仰っていました。
「うちの財務体質じゃ、戦略もヘッたくれも、あったモンじゃありませんよ」
資金(お金)に余裕がないため「毎日、売りまくるしかない」そうです。
すると、すぐに代金(お金)を払ってくれそうなお客さんのみ相手するようになり、売上にならない既存客には無沙汰します。
こうして「休眠客」が生まれます。いわずもがな、休眠客は、努めてゼロにしなければなりません。一度でも取引のあった休眠客は、需要が発生した実績がありますから、
- また、売れるか、もしくは、
- 御社との取引を体験しましたので、紹介者になる可能性
にもかかわらず、休眠させるということは、紹介が「最強」の新規営業と知りつつ、その芽を摘む(忘れ去られる)ことになりますが、それはそれで、
- すぐに売れるお客様だけが、お客様(ここに、ヒト・モノ・カネを集中する)
- またいつ売れるか分からない既存客は、放置(ライバルに取られても構わない)
- 紹介者は(積極的に)要らない
という営業戦略が出来上がります。
3/4.優秀な営業マンを中途で採用するのが難しい現実
さらに、どこの企業にでもありそうな人事戦略(ヒト)の問題は続きます。
・現在の既存客(一般客以外の優良顧客)と
・現在の営業マン
で、売上の限界に達してしまうと(ぶっちゃけ、その優良顧客からの売上が頭打ちになると)、新規のお客様を増やすべく、営業マンを増やす(新規に採用する)人事戦略が考えられます。
なぜかしら、もっとも抑えたいはずの固定費 = 人件費を増やす経営戦略に舵をとります。
そこに、大きな「理想と現実のギャップ」が存在します。
ひとくちに、営業マンが欲しいといっても、誰でもいいわけじゃありません。
そりゃ、どこの企業だって、優秀な営業マンが欲しい。
では、優秀な営業マンとは?
新規営業に限っていえば、朝礼が終わると「行ってきます」と出かけていって、夕方「売ってきました」と帰って来る営業マンです。
理想的ですよね(笑)たとえて言うなら、
- テニスの松岡修造さんのような、元気いっぱいの営業マンか、
- 踊る大捜査線の青島刑事のような、にこやかで、溌剌とした営業マン
でしょう。そんな営業マン、一流企業だって、零細企業だって、どこの企業だって欲しいに決まってますよね?
- 有名企業も、
- 無名企業も、
- 待遇の良い企業も、
- 安月給が精一杯の企業も、
みんな、狙っていますよ、優秀な営業マンを。
でも、ご安心ください。そんな優秀な営業マン、募集したって、来ません。そんな100点満点の営業マンは、
- すでに独立しているか、
- 何らかの事情でヘッドハンティングできないか、
- 高待遇で召し抱えられて
4/4.カネをかけるか?手間をかけるか?社長の判断はどっち?
そんな優秀な営業マンでなくもいいから、欲しいとなると、採用してから、育てることになりますが、採用した全員が全員、育つとは限りません。
- 営業職には、適性があります。
- 開発職にも、適性があります。
- 経理職にも、適性があります。
適性があれば、教えるほどに伸びていきますが、無ければ、社員も会社も不幸。
しかしながら、採用したあとに適性が無いことが分かったところで、整理解雇の四要件なくして、解雇できませんので、
- 売れない営業マンが居たたまれなくなる針をむしろを布くか、
- 適性はないと分かっていても、依願退職まで、雇用し続ける
ことになります(他にも、沢山のパターンがあります)
適性ばかりは、雇用してみなければ分かりません。その適性を見極めるために、
- 人件費(給料)と、
- 募集経費と、
- 教育費
をかけ、徹底的に、何年も、何年も、短期的に売る繰り返しが、林業型の営業戦略で、それで伸びてきた有名企業は何十社もあります。
要するに、林業型の営業戦略は、ヒト(人事)とカネ(財務)の負荷が大きい。
そのカネをかけ続けるか?最小限に抑えるか?を決められるのは、経営者のみ。
カネをかけなければ、手間をかけるのみ。顧客を育てる農業型の営業戦略です。いずれにせよ、
- 社会の求めに応じる価値を届けべく、営業活動するのか?
- 経費が膨らんだ自社を維持するために、営業活動するのか?
本音は後者であっても、かけるカネがなければ、手間をかけるしか、ありますまい?
- カネをかけて、社員を採り、養い、育てるか?
- 手間をかけて、顧客を育てるか?
の経営判断ですが、やや凝縮した感がある記事ですので、お分かりにならないところがありましたら、ご質問くださいね。
[完]