減少する大学の中で勝ち残る私大を経営するためのマーケティング

ケーススタディ

歌手で女優の酒井法子さんが入学して話題になった大学も今や無し

縮小する大学の経営を維持するには?マーケティングのセグメントで

大学経営が、大変な時代を迎えましたね。 このサイトによると、

http://blog.university-staff.net/archives/cat9/cat72/

わずか10年で、30もの私立大学(や学部・学科)が無くなりました。

1年に3つ(!)ずつ消えた勢いです。 歌手で女優の酒井法子さんが入学して話題になった創造学園大学も、今や、ありません。これから、もっと閉校します。なぜなら、少子化で、学生の数が足りないからです。

 私立大は半数近くが定員割れし今後も減り続けること必至

国公立は、二次募集でしのぎ、それでも足りなければ、大学・学部間の併合によって(平成の大合併と同じやり方で)閉校を避けると筆者は見ていますが、

私立大は、約600校のうち、半数ちかい43.2%が定員割れ(2017年現在)していますので、これからも、私学は、減り続けること間違いなし。

1.稼ぐ力と、借りる力は、大学という組織の実力

大学経営だろうと、会社経営だろうと、経営は、カネ(資金)が無くなったら、お終いです。

その反対に、カネ(資金)さえあれば、売上金が無くても、やっていけます。

そのカネ(資金)を、企業経営では、稼ぐか?借りるか?してゲットします。

稼ぐか?借りるか?二つしか無いんですね。

これが、大学経営の場合ですと、稼ぐか?もらうか?してゲットします。

  • 稼ぐ … 学生が支払う授業料や受験料
  • もらう … 国からの補助金

もらうについては、このサイトの「データ2」にあります通り、どれだけ、もらえるか?が、大学の実力なようです。

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14145111479

売るにしても、借りるにしても、もらうにしても、

カネ(資金)集めは、組織の実力

です。企業の場合、稼ぐ力と、借りる力です。

いわずもがな、経営戦略は、ヒト(人事)モノ(事業)カネ(財務)を動かす経営者の作戦で、どう動かすか?は、経営者の判断に委ねられます。とりわけ、カネ(財務)が重要で、

  • カネ(財務)…売り上げるか?借りるか?して、カネ(資金)を集める
  • ヒト(人事)…より稼ぐ人材を増やすために、カネ(資金)を投じる
  • モノ(事業)…より稼ぐ事業にするために、カネ(資金)を投じる

経営戦略が功を奏せば、経営者は、それなりの報酬を受け取ることができますが、失敗すれば、資金を出した投資家や銀行から糾弾され、最悪、クビになります(株主は、経営者を解雇できます)

なので、多くの企業が、財務基盤の強化を、経営戦略に掲げています。

2.大学の強みの分析(USP/コンピタンス/ケイパビリティ/ベネフィット)

企業経営も、大学経営も、経営戦略は一緒(ヒト・モノ・カネ。とりわけ、カネが重要)であることは、おわかりになりましたね?

では、あなたが、左前の大学の経営者だったら、どうやって立て直しますか?

もらう(補助金)は、構造的に入り組んでいますので、自力で、何とかできるものではありません。

となると、稼ぐ(学生の数を増やす)しかありませんが、高校生の数は減少中。

そこで、各大学は、社会人コースを設けていますが、抜本的な解決には、ほど遠い模様。

その理由は、社会人であれば、なんとなく、わかりますよね?通学するヒマとカネがあれば、通学したいものです。

その他に、マンガ学部、危機管理学部、ワイン科学など、各大学ごとに特色を出しています。

ユニークな売りを提案するUSP(ユニーク・セリング・プロポジション)ですね。これ(USP)で学生が集まるかどうかの判断は、お任せします。USPと似て非なるものとしては、

コア・コンピタンス

これを提唱したハメルとプラハラードが、お手本として、液晶技術のシャープを例示したのは、シャープが身売りした今となっては、皮肉なものです(苦笑)

そのコア・コンピタンスと、似て非なるものとしては、

ケイパビリティ

で、コア・コンピタンスの(たとえば、液晶を生産する)工場、設備、技術、特許といった資源(ハード)に対して、

上手い、速い、効率的、詳しい、後継者を育成できる等の組織の能力(ソフト)です。

  • 経営資源としての強み = コア・コンピタンス(たとえば、素晴らしい家を作る研究施設)
  • 組織能力としての強み = ケイパビリティ(腕のいい大工さんたちと、棟梁)

と理解しておけば、たとえば、液晶のシャープは、

  • 液晶を生産する特許や工場がある = コア・コンピタンス
  • 液晶に詳しい技術者や営業マンが集まっている = ケイパビリティ

の二つ合わせての強みであったことが分かります。

シャープの身売りによって、経営は、それ(強み)だけじゃダメなんだという証左にもなりましたが。そして、ご存じ、

ベネフィット(便益)

大学のコア・ベネフィットは、専門的で高度な教育ですから、これを強化するのが正道でしょう。ノーベル賞の山中教授の講義には、立ち見(!)が出たそうです。

専門的といえば、その道のプロを(客員として)招聘する大学も沢山あります。

客寄せパンダよろしくタレント教授が散見されるのは仕方ありません。これが集客(学生あつめ)の現実なのでしょう。

ベネフィットは2つ。

機能的便益

  • 大卒(学士)
  • 中卒や高卒よりも就職しやすい(大卒以上と指定している企業もあり)
  • 教員の免許を取るには、大学の単位が必要

これらは、何の差別化にもなりません(どこの大学も一緒です)。それから、

情緒的便益

です。「東大卒!すげ~」ってやつですが、これは、少子化が無関係な一流大学の特権であって、中小零細大学にとっては、何の強みにもなりません。

3.大学の強み(主観)ではなく、社会の求めに応じているか調べる(客観)

ここまで、強みを見つける(見つからないなら作る)方法を、4つを挙げました。

  1. USP … ユニークな売り
  2. コアコンピタンス … スキルとしての強み
  3. ケイパビリティ … 組織としての強み
  4. ベネフィット … お客様にとっての便益

それでも見つからない時は、気づきを促すことです。気づきとは、

  1. その手があったか
  2. ありそうで なかった
  3. ああ わかる わかる

の3つ。この覚醒は、15年前、拙著の処女作に書きましたが、おさらいますと、

社会の求めに応じた価値を届けるのがマーケティング

で、社会の求めに応じるには、

1)ニーズ(必要なもの)

2)ウォンツ(欲しがるもの)

以上の2つは、お客様が、何を買いたいか?分かっている場合です。

以下の2つは、お客様が、何を買いたいか?分かっていない場合です。

3)シーズ(技術から生まれるもの)

4)アウェイク(気づき)

呼称は「気づき」「覚醒」「アウェイク」なんでも構いませんが、要するに

まだ誰も気づいていない

それ(アイデア)に代価を支払うと言わしめる価値です。

それを見つけるには?

徹底的にリサーチすることです。絶対的な価値(主観)のみならず、相対的な価値(客観)も含め。

アイデアは、マーケティングリサーチから生まれます。

翻せば、マーケティングリサーチなくして、アイデアは生まれません(キッパリ)

大学経営を維持するために、マーケティングリサーチしてますか?

4.社会の求めに応じる価値でセグメンテーション

では、中小零細大学が、経営を維持するための筆者案を披瀝しましょう。

徹底的にリサーチしたわけではなく、アイディアフラッシュ※の粗削りながら、ご笑覧あれ。

※アイディアフラッシュ…思いつき、ひらめき

社会の求めに応じる価値を届けるのがマーケティングですから、社会の求めが

「公務員になりたい」

「うちの子を公務員にしたい」

公務員学部

を設けます。その名の通り、公務員を養成する学部です。

1~2年で、憲法や自治等の基礎を学び、3~4年で、学科に分かれます。

  • 警察学科
  • 防衛学科
  • 税務署学科
  • 教員学科
  • 消防士学科
  • 国家公務員学科
  • 地方公務員学科

等々『公務員になるための学部・学科』ですから、国家試験に通るための学問を集中的に教授します。

予備校よろしく「国家試験に何人が通ったか?」が、実力のバロメーターになります。

ライバルは東大(笑)、防衛大。なんとか教育大。日大、東海大等のマンモス私大。

学問のみならず、現役や退役の公務員を招聘し、現場の実際を語って頂きます。

職場を見学に行くのも楽しそうですね。自衛隊や警察は過酷そうですが(笑)

公務員になりたいという社会の求めに応じる大学の事業は、親御さんからも支持されるでしょう。

筆者が説く経営戦略における「間接客」です。たとえば、

  • 親「あんた、高校卒業後の進路、決まった?」
  • 子「まだ」
  • 親「なら、公務員学部へ行っときな」
  • 子「公務員になる気はないよ」
  • 親「気が変わって、民間へ行く気になったとしても、国家試験に受かっときゃいいんだから」

というイメージ。

学費を出すのは、一般的には、親

ですからね、「将を射んと欲すればまず馬を射よ」です。

もしも、学部を新設できなければ?

  • 経営学部という大括りではなく、鹿児島県の企業の経営学(鹿児島県経営学科)
  • 経済学部という大括りではなく、営業部に配属された時の営業学(営業学科)

という具合にセグメンテーション※します。

※セグメンテーション…切り分けること。固まりにすること。

文系大卒の七割が営業職に就くという話もありますので、

営業学部

は、いかがでしょう。要するに、

社会へ出るために必要な学問の強化・特化・看板化

です。このように、少子化といっても、恐るるなかれ。マーケティングを使えば、まだまだ、起死回生の新商品が出てきそうですよ?

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