お客様は人間という視点で店舗を運営する家具店_イケアの研究2/3

ケーススタディ

家具を買うより先に店舗内を楽しむ家具店のイケア

[レポート2の1]来店に至る障害を、買う楽しみへ変換

店舗運営で最も重要なのは、売買より先に、来店であることをレポート1で述べました。

来店には3つの障害があります。

  1. 移動費
  2. 移動時間
  3. 移動労力

以上3つの障害を取り除く必要があります。

「うーん、取り除くといってもナァ……」

  • 電車賃やガソリン代を肩代わりするわけにもいきませんし、
  • 移動時間や移動労力を換金するわけにもいきませんし、
  • それらを商品価格に乗せるわけにもいきません。

「いったい、どうしたらよいんだろう?」

と、お悩みの運営者は多いでしょう。

答えはカンタン、3つの障害を、

楽しみにしてしまう

ことです。たとえば、移動費。

これが旅行だったら、どうでしょう?

出張の多い方なら実感なさっているでしょう、ビジネスで出張するのも、観光で旅行するのも、同じ旅費がかかります。

同じ旅費がかかるのに、出張は楽しくありませんが、旅行なら楽しく、旅行には率先して費用をかけます。

労力も然り。旅行なら、苦労どころか、浮き足立って出かけます。

時間も然り。旅行なら、移動中の時間さえ楽しみ。

このように「○○へ行くのが楽しみ」にすればいいのです。その具体的な戦略をイケアから学んでいきましょう。

[レポート2の2]強みを伝えよう

IKEAは、店内のボードに、堂々と自社の強みを掲げています。

1…製販在一体

家具の企画から製造、販売まで、自社内で一貫した製販在一体化。

2…大規模小売店・大量陳列

イケアの店舗は全て大規模小売店。広大なスペースに大量の商品を大量に陳列。

3…付加サービス削除

家具の運搬ならびに組み立てはセルフ・サービス(顧客負担)

4…低価格

自社工場で大量生産するため大幅コストダウン

5…後述

上記4つ(5以外)は、分析でも何でもなく、店内のボードに掲載されてあり、見方を変えれば

「当社の優位性は4つあります」

と告知しているも同然です。

では、あなたの店舗では

「当店の強みはコレとコレとコレとコレの4つです」

と店内に掲げていますか?

もちろん、優位性がなければ、掲げようにも掲げられません。強みを見つけるところから始めましょう。

店舗のみならず、会社にも当てはまります。

せめて、ホームページには掲載できますよね。名刺でも、社用封筒でも、パンフレットでも構いません、あなたの会社の優位性は何なのか?伝えましょう。

[レポート2の3]イケアの強み分析[前半]

IKEAの4つの強みを分析してみましょう。

1つ目の製販在一体は、

  • 豆腐の製造販売
  • 和菓子の製造販売
  • パンの製造販売
  • 工場直送

など昔から存在しますが、イケアとの違いは、

ブランド化され、且つ、大型化されている

ブランド化され且つ大型化された製造小売業というと、米国の衣料小売店GAPが作った用語のSPA(Speciality store retailer of Private label Apparel)

ブランド化というキーワードが含まれる点で、小さな町の豆腐店のように、従来からの製販在一体化とは一線を画すにしても、製造・販売・在庫を一社だけで担う意味では、製販在の一体化と同義に考えておいていいでしょう。新語に惑わされずに済みます。

SPAは日本でユニクロが代表的です。ユニクロの前身が、衣料品の小売店であったように、SPAは、服飾業界の例が多いようです。

異業種だからこそ参考にできます。町の小さな和菓子屋さんが、SPAを参考にブランド和菓子を作り出して、世界へ向けて発信することも可能。

始めるのはカンタン。

「当店は小さな町の和菓子屋さんだから」

というこじんまりした意識を

「当店ブランドの和菓子を世界へ広めよう」

という意識へ切り替えるだけです。

夢みるスケールが異なれば、将来のスケールも異なります。

小さく夢みれば、小じんまりとまとまり、大きく夢みれば、大きく展開します。

大きく夢みて、誰に迷惑をかけましょう。夢は大きく描いていいのです。広島県の一地方の小売店だった、ユニクロのように。

[レポート2の4]イケアの強み分析[後半]

2つ目の大規模小売店・大量陳列は、珍しいことではありません。

家具の大型店は、イケア以外にも、大塚家具、無印良品、ニトリ、ルームズ、東京インテリア、村内、島忠、天神家具など首都圏だけでも数十店以上あります。

OZONEやワールド・ポーターのような「家具の大型売場」まで含めると、一体どれくらいあるか分りません。

確かに、小さな家具店との差異性、優位性にはなりますが、大規模小売店・大量陳列は、イケアだけの強みではありません。

では、それらとイケアは何が違うのでしょう?それが当レポートの分析テーマである戦略です。

3つめの付加サービス削除も、イケアだけの強みではありません。

家具の材料を、顧客が運んで組み立てることにより、価格を抑制できるサービスですが、これは、通販の家具と同じ。イケアだけの強みとはいえません。

4つ目の低価格は、通販の家具と同じどころか、通販では、配達してくれますが、イケアは、

配達してくれないのに通販よりも高額

ということは、じつは、別注の運搬さえ、サービスとしての無形商品で、運搬費でも利益を上げる仕組み?

だとしたら、よく仕組まれていますね。

以上のように、イケアの優位性は、競合他社や通販の優位性でもあり、イケア独自の優位性とはいえません。

では、何がイケアの圧倒的な優位性なのでしょうか?

[レポート2の5]5つめの優位性

5つ目の優位性が「レストラン」だと筆者は分析しています。

レポート-1にも書いた通り、家具売場を見て回るのは疲れます。休みたい。でも、普通の家具店には、休める場所がありません。

いえ、厳密には、あります。

大塚家具の有明本社ショールームのように、同じビルの中の他の場所にフードコートやレストラン街があり、そこを休憩所と考えるならば、休める場所は存在します。

ただし、フードコートやレストラン街まで、かなり歩くことになるため、休憩しに行ったが最後、そのまま帰ってしまう可能性もあります。

イケアには、

店舗の中にカフェ&レストランがあり、いつ何時でも休憩

できます。これがイケアの圧倒的な優位性。

ご存知のように、大規模の家具店は広く、2時間も見て回れば、空腹を覚えます。その時、イケアでは、休憩のお茶はもちろん、食事まで摂れます。

食事できる家具店が他にあるかどうか、検索して知る限り、店内にレストランがある家具店はイケアのみ※注

お客様が人間であることをイケアは知っているのでしょう、

人間は100%疲れるし、腹が減る「動物」

であることを。

注※店内にカフェを併設した家具店(と断定できるかどうか?)はありますが、何度も休めるイケアとは主旨が異なるようです

Cafe & Meal MUJI(無印良品)、インテリアunicoレストラン、アフタヌーンティー・ティールームetc.

家具で利益を出しカフェレストランでおとり化_イケアの研究3/3へ続く

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