先端を赤く色づけした付箋タイプのポストイットが売れるまでの軌跡

ケーススタディ

世界的な接着剤メーカーの3M(スリーエム)社。
接着剤メーカーというよりも、巨大な化学素材メーカーで、接着テープや、ポストイットを開発したのが、このスリーエム社でした。その、ポストイット(R)。

マーケティングでいうところのシーズ(Seeds)

の実例として有名すぎるほど有名です。時は、ベトナム戦争まっただ中の1968年。米国3M社の研究員が、超強力な接着剤を開発しようと研究していたところ、反対に、はがれやすい接着剤が出来上がってしまいました。目的とは正反対の失敗作。失敗作は、捨てられる運命。しかし、研究員は、その接着剤を、失敗作として諦めず、用途開発(この研究の種、つまり、はがれやすい接着剤から、何か、用途は考えられないか?)を繰り返して、社内の各部門へ提案して回りました。
https://www.mmm.co.jp/wakuwaku/story/story2-1.html
スリーエム社には、15%の時間を自分の好きに使っていい「15%カルチャー」という文化があったため、その行為(失敗作の追究)を、とがめる社員はいませんでしたが、相手にする社員もいませんでした。
そうした或る日、本のページをめくると、はさんであった栞(しおり)が落ちるのを見て、
「あの、はがれる接着剤が、使えるかも」
と、別の研究員が閃き、糊つき栞(のり付しおり)の開発が始まりました。こうして、2年以上の歳月をかけ、ポストイットが完成しましたとさ。
https://www.mmm.co.jp/wakuwaku/story/story2-2.html
この話には、続きがあります。
日本でも、ポストイットを売りだそうとしたスリーエム(当時は住友スリーエム)社でしたが、しかし、市場導入から2年間、まったく売れません。そこで、60万袋をサンプリングしてみたところ、使用感が聞こえてくるようになりました。特に、官公庁からの、

付箋として使いたいという要望

を参考に、紙の先端のみ赤く色づけした付箋タイプのポストイットを開発したところ、いちいち、

のりを付ける手間いらずの付箋

は爆発的に売れたという話。1983年のことですから、セピア色した大昔の話じゃありませんよね。この話におけるシーズ(種)とは、はがれやすい糊。
「このシーズから、用途をリサーチしてほしい」
といった仕事を、マーケティングの仕事を請けていた昔、何件も、やらせていただきましたが、用途開発は、至難の業であると同時に、ヒット商品の種(シーズ)であるのも確かです。

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