国勢調査から未来を予測→人口のぶんどり合戦に勝った地方は生き残る

マーケティングと経済

住民と企業のぶんどり合戦に勝った市町村のみ生き残る

大都市圏を除き、日本国の人口が減っている事実を数字で突きつけられた令和2年20回目の国勢調査でした。

調査開始以来、初の人口減少。

調査開始以来というより、日本国が始まって以来でしょう。過去のいずれの時代(明治時代、江戸時代、室町時代、鎌倉時代、平安時代…)よりも、令和の今のほうが、人口は明らかに多いのですから。

その国政調査を、ちょっと振り返ってみますと、2010年調査時点からの5年間で94.7万人減少していたそうです。

約95万人といったら、政令指定都市が一つ、あるいは、県が一つ、消えたようなものです。

具体的に、政令市と比べてみると、人口15位の大阪府堺市(84万人)規模が5年間で消滅したに等しく、県別で比べると、

  • 山梨(86万人)
  • 佐賀(84万人)
  • 福井(80万人)
  • 徳島(78万人)
  • 高知(76万人)
  • 島根(71万人)
  • 鳥取(58万人)

の県民が丸ごと消えたに等しい。わずか5年間で(驚)です。

2015年に実施された国勢調査の結果ですから、次の2020年は、ますます減少しているに違いありません。

たとえば、秋田県は、知事が予想なさっていた通り、100万人を下回りました(2010年時点で96万人)が、

それにしても、減少のスピードが早すぎるような気がするのは筆者だけでしょうか。

1920年の調査開始以来、初めての減少ということは、大正9年以降ほぼ一世紀の間、人口は増加するのが常識で、

人口増加を前提に、政治・経済・社会・人々の暮らしがあった

といっていいでしょう。しかし、100年の常識が破られたのですから、これまで体験したことのない未曽有のパラダイムシフトが起きます。

みんな、肌で感じていたんですケドね。

  • お客さんが少なくなった……
  • ショッピングモールやスーパーにお年寄りが増えた……
  • 取引先の企業が減った……

それ(国勢の減速)が、現実に起きていた事実を、数字で裏付けるかたちになりました。

その一方で、首都圏4都県は、約51万人も増えました。

減った人口95万人の半分以上も、首都圏のみ増加

しています(滋賀県も微増)。

地方は仕事が少ないから等々いろいろな理由はあるでしょうが、地縁、血縁、しきたり、風習、暗黙の了解といった価値観を押し付けられにくい首都圏は暮らしやすく、その意味で都会は冷たいのではなく、

  • 他人に干渉したくない(されたくない)
  • わずらわしい人間関係が苦手なだけその土地特有の不文律にしばられたくない
  • 自分らしく自由に暮らしたい

のであって、いわば、地方で暮らすのは窮屈な人たちが、首都圏へ集まるとの見方もできます。この見解が正しければ、

「オラが町だって、若いモンは、欲しい。けれども、よそ者が、郷に入ってくるならば、郷に従ってもらう」

って、それでは、地方の人口が減るのは止むを得ません。

  • 長老達の、
  • 長老達による、
  • 長老達のための自治

を維持する目的で、よそが育てた若い世代を欲しがるなんて、都合が良すぎませんか?

たとえるなら、

  • 「いったん、他家の家風に染まった、離婚経験者とは、結婚しない」
  • 「他社の社風を知っている社員なんぞ、使いにくくて、中途採用しない」

というこだわりがあるにもかかわらず、

  • 「一人は寂しい。良い人と結婚したい」
  • 「中小企業には、新卒が来ない。新卒が少なくて、困っている」

と、矛盾よりも、高望みに悩んでいるようなもので、これじゃ、中小零細市町村に、若い人なんか来ませんって。中小零細市町村ならではの強みを発揮しなくては。

ちなみに、中小零細市町村という日本語はありません(誤用ではありません)。筆者の造語です。

その強みを主観的に考えると、

「これぞ!オラが町の強みだ」(たとえば、豊かな大自然が強みだ)

と思い込んでしまい、そこで暮らしていると、その強み(自然豊か)が当たり前になってしまい、見えにくくなります。

しかし、よそからなら、強みが見えます。岡目八目です。

弱みも見えます。自然が豊かな地方なんて、強みでも何でもない(津々浦々どこにでもある)ことも丸見えです。

それでも、強みも弱みも知っている、よそ者は要らないのですか?よそから“郷に入ってきた若者”の話を聞く耳は持たないのですね?ということです。

YESならば、ますます人口は減るでしょう。住民税も、法人税も減り、いずれは限界集落やむなし。

いわずもがな、次の時代を作るのは、長老ではなく、若者です。

そうやって、時代は移り変わってきました。

  • どこにでも灰皿があった時代から、禁煙・分煙が当たり前の時代へ
  • 固定電話よりも、携帯電話が多い時代へ
  • 大卒が学士様の時代から、石を投げれば大卒に当たる時代へ

白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫の家電三種類が、三種の神器と呼ばれた高度経済成長期に、いずれ、サンヨーがなくなり、シャープが経営難に陥って他国へ身売りするなんて、誰が想像したでしょう。

決して、サンヨーやシャープが悪いのではありません、日本では、コアベネフィットのみの家電メーカーの役割が終わりつつあるという、時代の移り変わりです。

次の時代を担うのは、10歳、20歳、30歳、40歳、50歳の年下です。20歳は50年後を、30歳は40年後の未来を見ることができます。

少子化で、子供が産まれにくいのですから、地元生まれの地元育ち(地元プロパー)は少数しか育たず、これでは、よそから、年下をブン取ってくる他ありませんよね?

企業も(人口や企業数が減って市場が縮小しているのですから)、ライバル企業のお客さんをブンどるしかありません。

他に道があるとしたら、新しい価値を作る以外にありません。

同業者で集まって懇親会を開き、セミナーを開き、ゴルフに興じ、仲良くするのは結構なことですが、

ライバルにブン取られるのは、あなたのお客様

であり、懐へ入ってくるはずだった売上金です。

競合他店の出店で、スグに顧客減を把握しやすい小売業ならばまだしも、いつ売れるか分からない商品(たとえば、広告やリフォーム業)、商売における顧客の減少は、ボディブローのように、一年後、二年後に効いてきます。

その時になって(キャンペーン等の)カンフル剤を打っても、時すでに遅し。ライバルは、既に、着々と、地道に、長期的な戦略を布いています。アリとキリギリスです。

というよりも、そうした長期的な戦略を、ナレッジワーカーたちが浸透させています(たとえば、筆者が開発したナレッジ・マネジメントの一つが、長期接触営業戦略です)

今は昔、人口や企業数が増えていた頃ならば、

短期的な営業戦術(たとえば人海戦術)が功を奏しました

が、人口や、企業数が減っているとなれば、地方自治における住民の数にしても、企業経営における顧客の数にしても、これから付き合っていきたい相手に、

時間と手間と費用( = 愛情)をかけて、人を増やす( = 住民や、顧客を増やす)

長期的な戦略が求められるのではないでしょうか?

この自説が正しいかどうか、今回21回目の調査結果が、数字で見せてくれるはず。

QooQ